前世恋人だった副社長が、甘すぎる
外に出ると、随分暖かくなった春の風が、私のコートを巻き上げた。
その、温かくて柔らかい陽射しの中、怜士さんと手を繋いで歩く。
見上げると、怜士さんは私の大好きな笑顔で私を見下ろしてくれて、私の胸はずっときゅんきゅん言い放しだ。
「これから家に帰って、昼からフランスへの出張だ」
その、低くて甘い声が心地よい。
「もちろん穂花も一緒だよな。
……もう、絶対に離さないから」
「はい」
その大きくて、傷ついて腫れた手をぎゅっと握り返した。
怜士さんも、私の手を優しく握り返してくれる。
私たち二人の生活は、まだまだ始まったばかりだ。
今世では、いつか息絶えるその日まで、二人でずっと幸せを噛み締めて寄り添っていきたい。
ー完ー