前世恋人だった副社長が、甘すぎる
次々に仕事をこなしていく私を、副社長はずっと甘い瞳で見つめている。
隙があれば頭を撫で撫でしようと手を出すのだが、それに敢えて気付かないふりをする。
そしてとうとうしびれを切らした副社長が、
「穂花!」
私を呼び、ぎゅっと手を引かれる。
途端に顔に火が灯り、身体を甘い戦慄が駆け抜けた。
どうしよう、私の身体、おかしい。
「穂花はそんなに仕事をしなくてもいいんだよ」
甘く優しい声。
この声を聞くと、身体がふにゃあっとなって、顔がにやけてしまって……だから私は、この副社長の甘い声を聞きたくなかったのだ。
「……でも……」
必死で抵抗する私に、そっと身体を近付ける副社長。
ふわっといい香りがして、胸のドキドキがさらに大きくなる。
「そばにいてくれ……」
消えてしまいそうな声を聞き、とうとう私は彼の顔を見上げた。
私の想像通り、副社長は泣いてしまいそうな弱々しい顔をしている。
その頬にそっと手を伸ばすと、切なげに頬を擦り寄せ手を握る。
「俺を、独りにしないでくれ……」