前世恋人だった副社長が、甘すぎる
副社長をあしらいつつなんとか業務を終えた。
副社長は今夜用事があるらしいから、私も一人で家に帰ろうと思う。
家といっても、もちろん豪邸などではない。今世私はごく普通の一般家庭に生まれ、ごく普通に育ってきた。
そして社会人になった今は、ごく普通の賃貸マンションを借りて一人で住んでいる。
まさしく、副社長とは住む世界が違うごく普通のOLなのだ。
それなのに、
「送ってくよ」
副社長は車のキーを出し、私に見せる。
ぎょっとした私は
「大丈夫です!!」
あからさまに拒否するのに、副社長は聞いてくれない。
「ちょうど俺も予定がなくて、今後のことを穂花と話そうと思って」
いや、ちょっと待って!
副社長、今日の夜は予定があると言ってたよね?
そして、その予定を理由に東京百貨店社長との会食を延期させたよね!?
当の副社長はそんなことはもう忘れたらしい。
コートを羽織り、もう帰る支度なんて始めている。
「困った人ですね」
なんて言いつつも、少しだけ副社長に付き合ってあげようかと思ってしまった。