前世恋人だった副社長が、甘すぎる

上質な革の香りと、ほんのり副社長の香りがした。それで頭がくらっとしてしまう。

副社長が運転席に座ると、車は低い重低音の唸り声を上げる。

胸がドキドキして、何を話せばいいのか分からなくなって、

「驚きました」

私は副社長に言う。


「黒崎ホテルグループの副社長は、お付きの運転手がいるのかと思っていました」


そして、慌てて口を噤んだ。

これじゃあまるで、副社長を予想以下だと言っているようなものだ。



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