前世恋人だった副社長が、甘すぎる
それなのに副社長は面白そうに笑って告げる。
「運転手頼んでもいいんだけど……俺は穂花と二人になりたかったから」
ちょっと待って、それは反則なんですけど。
絶対副社長なんかに靡かないと言い聞かせているのに、ぐいぐい心を掴まれてしまうんですけど。
そして、今夜会食を断った理由も、私と一緒にいたかったからかと愕然とする。
「黒崎ホテルグループの副社長ともあろう者が、そんなことでは駄目です」
思わず口走ったが、
「駄目……?」
信号で停止すると、副社長はなんだか熱っぽい瞳で私を見る。
その視線をわざと避けるが、じろじろ見られているのはよく分かった。
「俺、別に仕事とかどうでもいいよ。
俺には穂花がいてくれれば……」
それ以上、言ってしまったらいけないと思った。
私はただの副社長の秘書だ。もとから怪しい関係なのに、このままではますます怪しい関係になってしまう。
公私混同もいいところだ。