前世恋人だった副社長が、甘すぎる
甘い瞳で見つめられ、離れられないように手をぎゅっと握られ、そのまま抱き寄せられる。
不覚にも、私はその頑丈な身体に羽交い締めにされる。
予想以上に硬くて引き締まったその身体に、鼓動が鳴り止まない。
私は真っ赤な顔のまま、小さい声で告げる。
「怜士さん……」
すると彼は、また泣いてしまいそうな儚い顔で笑った。
そして、私を抱きしめたまま、消えそうな声で告げる。
「俺は今、夢ではないかと思っている。
……夢だったら、醒めないでいて欲しい」
「私もです」
こうやって、どんどん怜士さんにのめり込んでいく。
この先に幸せになれる確信もないのに、ただただ愛しくて……私の頭の中からは、マルクのことなんて抜け落ちていた。
それなのに、怜士さんはクリスチーヌのことばかり考えているのだろう。
「穂花の手に傷がついたらいけないから、俺が食事を作るよ」
ほら、わざとか知らないけど、あの時と同じことを言うのだから。
そして作られた料理は、酷く懐かしいあの料理だったから。