前世恋人だった副社長が、甘すぎる
「おはようございます」
部屋を出て遠慮がちにリビングの扉を開くと、そこはもう甘くて美味しそうな香りで満たされていた。
おまけに、ジュウジュウなんて、何かが焼ける音がする。
慌てて広いアイランドキッチンを見ると、そこには黒いスウェットを着た怜士さんがいて、何かを焼いているではないか。
「おはよう、穂花」
嬉しそうに頬を緩める怜士さんを見て、はっとした。
私としたことが、起きる時間が遅すぎた。
今朝だって、怜士さんに朝食を作らせてしまって……
「すみません、明日からもっと早く起きます」
焦る私に、
「いいんだよ」
怜士さんは静かに言う。
「俺は昨夜、色々考えてしまって眠れなかったから」