前世恋人だった副社長が、甘すぎる




「おはようございます」


部屋を出て遠慮がちにリビングの扉を開くと、そこはもう甘くて美味しそうな香りで満たされていた。

おまけに、ジュウジュウなんて、何かが焼ける音がする。

慌てて広いアイランドキッチンを見ると、そこには黒いスウェットを着た怜士さんがいて、何かを焼いているではないか。


「おはよう、穂花」


嬉しそうに頬を緩める怜士さんを見て、はっとした。

私としたことが、起きる時間が遅すぎた。

今朝だって、怜士さんに朝食を作らせてしまって……



「すみません、明日からもっと早く起きます」

焦る私に、

「いいんだよ」

怜士さんは静かに言う。

「俺は昨夜、色々考えてしまって眠れなかったから」



< 69 / 258 >

この作品をシェア

pagetop