前世恋人だった副社長が、甘すぎる
ふと前を見ると、食器棚のガラスに私たちの姿が映っていた。
真っ赤な私と、大切そうにそれを包む怜士さん。
怜士さんは甘くてとろけそうな瞳で、愛しそうに私を見下ろしている。
こんな怜士さんを見ると幸せだなんて思うけど、やっぱり胸がちくりとする。怜士さんは私にクリスチーヌを重ねているのだから。
気付くとIHの上に置いたフライパンから、少し焦げたにおいがする。
私ははっと我に返り、
「こっ、焦げています!!」
私を覆う怜士さんを突き飛ばした。
怜士さんが焼いてくれていたベーコンエッグがぷすぷすと黒い煙を吐いている。
「もう!何やっているんですか!?」
「悪い。ついつい穂花に見惚れていて」
わざと口を尖らせながらベーコンエッグを皿に盛り付けつつも、ホッとした。
あのまま甘々モードが続いていたら、私はどこまで堕ちてしまったのだろう、そんなことを考えられずにはいられなかった。