前世恋人だった副社長が、甘すぎる
怜士さんの作った朝食は、少し焦げていたけどとても美味しかった。
きっと、すごく高い食材を寄せ集めたのだろう。
それを慌てて食べて、
「早く行かなきゃ!!」
準備をする私に、
「なにをそんなに急いでいるんだ?」
のんきな怜士さんは聞く。
怜士さんは副社長だから、いわゆる社長出勤なんてしているのだろう。
だけど私はただの社員だ。このままだと始業に遅れるし、
「副社長より先に出社して、副社長が仕事を出来るように整えないと!」
ということだ。
それは当然のことなのに、
「……はぁ?」
怜士さんは顔を歪める。
「それは田川が言ったのか?」
そう、田川さんから聞いている。
だけどここで馬鹿正直に田川さんから聞いたと言ったら、田川さんはまた理不尽な仕打ちを受けるかもしれない。
私は言葉を飲み込んで、首を横に振った。
「いいえ。それは秘書として、当然のことなんです」