前世恋人だった副社長が、甘すぎる


怜士さんの作った朝食は、少し焦げていたけどとても美味しかった。

きっと、すごく高い食材を寄せ集めたのだろう。 

それを慌てて食べて、 

「早く行かなきゃ!!」

準備をする私に、

「なにをそんなに急いでいるんだ?」

のんきな怜士さんは聞く。

怜士さんは副社長だから、いわゆる社長出勤なんてしているのだろう。

だけど私はただの社員だ。このままだと始業に遅れるし、

「副社長より先に出社して、副社長が仕事を出来るように整えないと!」

ということだ。



それは当然のことなのに、

「……はぁ?」

怜士さんは顔を歪める。

「それは田川が言ったのか?」



そう、田川さんから聞いている。

だけどここで馬鹿正直に田川さんから聞いたと言ったら、田川さんはまた理不尽な仕打ちを受けるかもしれない。

私は言葉を飲み込んで、首を横に振った。


「いいえ。それは秘書として、当然のことなんです」






< 73 / 258 >

この作品をシェア

pagetop