前世恋人だった副社長が、甘すぎる


扉がゆっくり閉まった瞬間、

「どういうことだ、穂花」

怜士さんは不機嫌そうに聞く。

ただ冷めていたその顔は、今や頬を紅潮させ、悔しさや怒りなど入り混じったような表情をしている。


「社員に仕事として手土産を買いに行かせるのは、当然のことだろう」

「はい、仕事であれば」


私はそう言いながらも、怜士さんのやり方に折れたくないと思う。

怜士さんは本当は温かくていい人だ、だけど他人に興味がないため勘違いされているのだろう。

きっと、前世最愛な人を殺されて、人間不信になっているんだ。


「ですが私は、人の気持ちも考えない冷たい人は嫌です。

……笑顔で、優しくって、周りの人も大切に出来る。そんな人が好きなんです」


< 88 / 258 >

この作品をシェア

pagetop