前世恋人だった副社長が、甘すぎる
扉がゆっくり閉まった瞬間、
「どういうことだ、穂花」
怜士さんは不機嫌そうに聞く。
ただ冷めていたその顔は、今や頬を紅潮させ、悔しさや怒りなど入り混じったような表情をしている。
「社員に仕事として手土産を買いに行かせるのは、当然のことだろう」
「はい、仕事であれば」
私はそう言いながらも、怜士さんのやり方に折れたくないと思う。
怜士さんは本当は温かくていい人だ、だけど他人に興味がないため勘違いされているのだろう。
きっと、前世最愛な人を殺されて、人間不信になっているんだ。
「ですが私は、人の気持ちも考えない冷たい人は嫌です。
……笑顔で、優しくって、周りの人も大切に出来る。そんな人が好きなんです」