前世恋人だった副社長が、甘すぎる
「大丈夫だ、しっかり賃金は払うから」
いや、そういう問題でもない気がするのだけど。
それよりも、怜士さんと一緒に出張だなんてドキドキする。
私は無事に帰ってくることが出来るのだろうか。
私は深呼吸して気持ちを切り替えた。
そして、
「怜士さん、六時から『若手経営者の会』です。
私は今から会場に行ってセッティングしますから、五時半に手配したハイヤーに乗って会場までいらしてください」
告げる。
だが、
「俺は穂花と一緒に行く」
この副社長はそう言って部屋を出ようとするのだ。
おまけに、
「穂花。社交の場に、そんな服で行かせることは出来ない」
怜士さんは私の地味なスーツを上から下まで眺める。
その舐めるような熱い視線に、いちいちドキドキしてしまう私。
だが、冷静にと自分に言い聞かせる。
私は怜士さんの秘書だ、会でも裏方に徹するのが努めだろう。