先輩の理性、疼かせてもいいですか?
先輩のご自宅に近づくにつれて、心拍数は速くなって、車体がわずかに揺れるたびに吐きそうになりながら、
私はまるで捕虜みたいにふたば先輩のがっちりとしたガードで大豪邸に連れてこられてしまった。

この部屋…?大広間?も、大豪邸のほんの一部に過ぎないんだろうな。

もう私には到底理解が及びそうにもない空間で、私は今、味覚を失ったように味わう余裕もない面持ちで、もはや一食いくらするんだよってくらいのディナーをいただいている。

快く私を迎えてくれたふたば先輩のお父様とお母様はとても穏やかな方達で、
だけどさっきからずっと聞かされている羽田グループのお話に、私の脳みそはついていけていない。

「父さん、そんなことより今日兄さんは?」

「そんなことってことはないだろう?いずれはお前達が継ぐんだからな?」

「いいじゃない。いきなりこんな話をされてもセナさんだって困るでしょう?ね?」

私を見て微笑んだお母様はとっても美しい。
こんな気品…私に備わる自信なんてゼロだ。

「よつばなら部屋に居るだろう。試験が近いって言ってたな」

ふたば先輩にお兄さんがいらっしゃるなんて初耳だった。

先輩のお兄さんだもん。
きっと美形で、頭脳明晰なんだろうな。

「そろそろ部屋に上がるよ。もう少ししたら送ってくから」

ふたば先輩が私を促して、座り心地が良すぎるチェアから立ち上がった。
なんだか逆に背筋が固まった気がする…。

「セナさん。ふたばをよろしくね」

「はっ…はいっ。こちらこそ…」

頭を下げて、大広間を出ていくふたば先輩の後を追った。
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