きっかけもはじまりも
***
「遅れましたぁ」
はぁはぁと息を切らしながら、私はがらりと教室のドアを開けた。
黒い頭がいっせいにこちらを向く。
その向こう側から、眼鏡をかけた先生が、驚いたような声を投げてよこした。
「おっ、山下!遅かったな。大雪で大変だったんじゃないのか」
「はい、やっぱりこの雪で電車とかバスとか、うまく繋がらなくて。遅刻してすみません」
釈明しながら、私は友達の由紀の隣の席につく。偶然空いていたのか、取っておいてくれたのか。
「大雪だし、休んでも大丈夫だったのに、無理してきたのか?お疲れさん」
「だって、先生の授業、どうしても受けたかったんですもん」
冗談めかした中に本心を紛れ込ませて私は言った。
「お、おう、そうか。それはありがとな」
先生は眼鏡にちょこっと指を触れると、にっとした。
でも、少しだけ照れ臭そうに見えたのは、私が先生を好きだから、そう感じただけかな?
ふふっと満足そうな私を見て、由紀がくすっと笑った。私にしか聞こえない小声で言う。
「いったい、どっちが好きなんだか」
私も由紀にしか聞こえない声で言った。
「どっちもだよ」
「遅れましたぁ」
はぁはぁと息を切らしながら、私はがらりと教室のドアを開けた。
黒い頭がいっせいにこちらを向く。
その向こう側から、眼鏡をかけた先生が、驚いたような声を投げてよこした。
「おっ、山下!遅かったな。大雪で大変だったんじゃないのか」
「はい、やっぱりこの雪で電車とかバスとか、うまく繋がらなくて。遅刻してすみません」
釈明しながら、私は友達の由紀の隣の席につく。偶然空いていたのか、取っておいてくれたのか。
「大雪だし、休んでも大丈夫だったのに、無理してきたのか?お疲れさん」
「だって、先生の授業、どうしても受けたかったんですもん」
冗談めかした中に本心を紛れ込ませて私は言った。
「お、おう、そうか。それはありがとな」
先生は眼鏡にちょこっと指を触れると、にっとした。
でも、少しだけ照れ臭そうに見えたのは、私が先生を好きだから、そう感じただけかな?
ふふっと満足そうな私を見て、由紀がくすっと笑った。私にしか聞こえない小声で言う。
「いったい、どっちが好きなんだか」
私も由紀にしか聞こえない声で言った。
「どっちもだよ」