【マンガシナリオ】優しくない推しの"熱愛報道相手"に選ばれました!?

1話

○花上家 • 桜部屋(朝)

テレビからニュースが流れている。 
それを見ながらメイクをする花上桜(はながみさくら)(18)。

リポーター『本日15時より、大人気アイドルグループLook for your.のリーダー、風沼リウ(かぜぬまりう)(18)さんが熱愛報道による緊急会見をいたします!』

メイクブラシを落とす桜。

桜「熱愛、報道……?」

部屋に飾られている無数のリウグッツたち。




○同 • リビング

顔を真っ青にして階段をドタドタと降りてくる桜。
同じく顔を真っ青にしてテレビを見ているママ。

桜「マママママ」
ママ「さくらさくらさくらさくら」
桜「リウ様が……」
ママ「Look for your.が……」
桜•ママ「終っちゃうよぉーーー!!!」

2人で抱き合う。

桜「熱愛報道なんてずっとでないプロだったのに!」
ママ「もしかしたらママの推しの順くんも!?」
桜「うぅ……転校初日だけど学校行きたくない」
ママ「ママも今日は仕事無理……」

桜(朝からお見苦しいところを大変失礼いたしました(泣))
 (私、花上桜。3人組アイドルグループ、Look for your.のリウ様を超絶推しているヲタクの1人!)
 (なんだけど、朝から心がめげそうです)




○通学路(朝)

 とぼとぼと下を向きながら歩いている。

桜「そりゃ、リウ様はめちゃくちゃ優しくてかっこよくて王子様って感じの人だから彼女さんがいたっておかしくないよ?おかしくないけど……」

 歩行者信号が赤になったのに気づかない。

桜「でもせめてファンには見えないようにって……それもワガママか……はぁ」

私(リウ様を推して早5年。まだ1度も会えたことないのにこんなのってないよ)

 そのまま横断歩道を渡ろうと足を踏み出した時、後ろから体ごと思いっきり引っ張られる。

桜「きゃっ!」

 倒れた下には、同じ制服の帽子を深く被った男子が。

桜(ヤバいっ!謝らなきゃ)

桜「ご、ごめんなさい!」
男子「お前死にたいのか?だったらこんな迷惑な場所で自殺未遂するのはやめろ。不愉快だ」

桜(不愉快?)

桜「不愉快ってそんな言い方─」

 信号が青になり、歩き出す男子。

 放心状態の桜だったが、男子が倒れていたところにLook for your.のキーホルダーが落ちているのを見つける追いかける。

桜「待って!!」
男子「なに」
桜「これ落としたよ!ねぇLook for your.好きなの!?私も大好き!特にリウ様推し~」

 鞄につけているキーホルダーを見せる。

桜「それにその制服!私と同じ学校じゃんっ。って言っても今日からの転校生だけど。良かったら一緒に─」
男子「行かない」

 キーホルダーを奪い取るように取り、行ってしまう。

桜「仲良くなりたかったなぁ……って学校どっち!?」

 迷っている桜を陸橋の上から見て、

男子「やっと見つけた」




○学校 • 教室(朝)

 ホームルームをしている。

先生「今日からこのクラスの仲間になる、花上桜さんだ」

 息が上がっている桜。

桜「よろ、しく、お、ねがい、します」
先生「だ、大丈夫か」
桜「ご心配、なく」

桜(ぎりっぎりで間に合ったセーフ)

先生「席は窓側の1番後ろだ。分からないことがあったら隣のやつに聞くように」

桜(窓側窓側)

桜「は……い!?!?」

 隣の席を見ると、先程会った帽子を被っている男子だった。

先生「どうした花上」
桜「なんでもないです!」
先生「そうか。じゃあ今日の連絡を話すぞー」

 恐る恐る席に座る。

 チラッと横目でみると、男子は思いっきりこちらを向いている。

桜「ひぃっ」

桜(なんかこっち向いてるーーー!!)

 クラス全員が桜を見る。

桜「あ、や、ちょーと緊張しちゃって!ごめんなさいっ」
先生「あーそうだよなぁ。よし、風沼。後で校舎を案内したり色々してやってくれ」
風沼「(無言で頷く)」

桜(あわわわわ、大変なことになってしまった)

またチラッと見ると、圧をまとった男子がさっきと同じ様にこちらを向いている。

桜(リウ様、助けてください。私の心は折れそうです)





○同 • 中庭(昼)

 お弁当を食べている人が何人かいる。
 
風沼「ここが中庭」
桜「おぉ~綺麗!素敵!」
風沼「次行くぞ」
桜「ちょっと待ってよ、早い!」

桜(昼休みに校内を案内してもらってるわけだが)

○同 • 職員室前

風沼「ここは職員室」

桜(一向に仲良くなれる気がしない)
 
桜「あのー、お昼まだだよね?一緒に」
風沼「食べない」

桜(むしろ、悪化してる気がするのは気のせいだろうか)

○同 • 空き教室前

 校舎の1番奥。
 廊下に人はいなく静か。

風沼「誰も使わない空き教室。窓から桜が見えるから見てみたら?」
桜「ほんと!?みるみるー!」

桜(教えてくれるとか案外優しいところもあるじゃん!)

 満開の桜が咲いている。

桜「綺麗~」

 見ていると、後ろからガチャっという音がする。

 振り返ると、沼風がドアの内側から鍵を閉めている。

桜「あのー?」

風沼「お前、俺の正体に気づいていてわざとそういう態度とってるだろ」
桜「えっと、どういうこと?」

 沼風が近づいてきて、カーテンを閉めていく。

風沼「しらばっくれんな。朝最初に会ったときから気づいてたんだろ?」
桜「本当になんのことか分からないんだけど」

 黒板に追い詰め、壁ドンをされる桜。

桜(!?)

風沼「こうやってやられたいからわざとまだ気づかないふりしてるの?」

 帽子が下に落ちる。

 風沼は、Look for your.のリウだった。

桜「リ…ウ様……?」

桜(なんで推しがここに!?)

リウ「ねぇ……(雰囲気を変えて→)お前の望みはなんだよ」
桜「……」
リウ「あー、やっぱりアイドルの俺と別人で声もでないほど驚いた?ならもう関わるな」

 教室を出ていこうとするリウ。

桜「リウ!リウリウリウ様!やっと会えた!会いたかったです!」
リウ「は……?」
桜「私ずっと会いたくて!5年間推してきたけどチケット1回も当たったことない運なし人間で…。今すっごく嬉しい!!幸せ!!」

 思わずリウに抱きつく。

リウ「っ!?やめろ触んな」
桜「あっ、ごめんなさい!テンション上がっちゃってもう私ったら本当ダメだな」
リウ「お前、俺がリウだってこと知ってたんじゃなかったの?」
桜「まさか。知ってたらあんなに平穏にいられないです!」
リウ「この性格は?幻滅しないの?」
桜「するわけない!リウ様はリウ様。でも……」

 泣き出す桜。

桜「熱愛って、どういうことですかー?」
リウ「あーめんどくせ」
桜「こんなヲタクの欠片が喚いたところでだけど、リウ様には幸せになって貰いたいからっ」 
リウ「あれ嘘」
桜「リウ様が幸せなら幸せならって思うけどやっぱり……へ?」
 
 泣き止む桜。

リウ「あれ俺の姉貴」
桜「姉貴……?」
リウ「両親が縁談もちかけてきて受けなきゃアイドル辞めさせるって言うから、姉貴と組んで婚約者ができたって呈にしてる」
桜「そんな……じゃあ、リウ様はアイドルを辞めないために嘘を?」
リウ「ま、そゆこと」 

桜(なんて、なんてファン想い!うちの推し尊!)

リウ「あー、話しちゃいけないこと話しちゃったなぁ」
桜「そう、ですね?」

 壁に追い詰めていくリウ。

桜(さっきとデジャブ!)

桜「勿論誰にも話しませんのでご心配なくっ。それでは!」

 ドアの方に向かって歩こうとするが、

リウ「そういうわけにもいかないな」

 壁ドンをされる。

リウ「お前、姉貴の代わりに俺の熱愛報道相手になれ」
桜「は……?」

桜(こんなヲタクの欠片の私ですが、推しの熱愛報道相手に選ばれました!?)


 
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