濁った僕を抱きしめて
レジをしていた年配の女性は、こんな若造がどうしてこれだけの金を持っているんだろうと不思議そうな顔をしていた。


レジの近くに飾るように置かれた、白いブーツが目に入る。
そう言えばわたし、靴が合わなくなってきていたんだ。


流石に靴も買ってもらうのは申し訳ない。
今日はやめにしよう。


店員さんに見送られながら店を出て、また歩き出す。


「店員さん、めっちゃ驚いてましたよ」
「何に?」
「拓海くんがお金持ちなことに」


ははと拓海くんが声を上げて笑う。
わたしの右手から持っていた紙袋を取って、何かを言おうと口を開きかける。


言葉が見つからないのか、拓海くんは下唇を噛むと、少し考えたあとに口を開いた。


「……まぁ、汚い金だけどね。全部」


何かを悔やんでいるような、そんな表情を浮かべる。
そんな顔をさせてしまったことが申し訳なかった。


「他は?」
「え?」
< 104 / 241 >

この作品をシェア

pagetop