濁った僕を抱きしめて
「結構買っちゃいましたね」
「ね。でもいいじゃん、久しぶりの買い物だったし」
「そうですけど」
わたしの両手も拓海くんの両手も、服や靴やらで埋まってしまっている。
イルミネーションを見て帰る予定だから、手を繋いで見れるかと思っていたのに。
「璃恋、なんで不機嫌なの?」
「別に不機嫌じゃないです」
ああもう、ほんとバカらしい。
こんな他愛のないことで不機嫌になって、気を遣わせて。
なんだか自分が嫌になってくる。
「ん」
拓海くんの左手が差し出される。
「なんですか」
「荷物。持つよ」
「拓海くんだって持ってるじゃないですか」
「いいんだって。早くちょうだい」
右手に持っていた荷物を拓海くんに渡す。
その荷物は流れるように拓海くんの右手へと渡されて、左手はわたしの右手と繋がれる。
「こうしたかったんだよ」
そう言う拓海くんの耳が少し赤く染まる。