濁った僕を抱きしめて
「これ……本当、なの」


拓海くんから携帯を受け取る。
画面には母親から送られてきたメールが出ている。


思い出した。
世界の声が遠くなったのも、身体が重怠くなったのも、すべてメールを見てからだった。


メールには何が書いてあったんだっけ。


「璃恋へ。
突然連絡してごめんなさい。
急だけど、お父さんが亡くなりました。
それで、これからのことについて色々と話がしたいの。
×日、ここで会える?」


という分言と共に、とあるカフェの住所とホームページのリンクが貼られている。


わたしはそれを見たまま動けない。
どうしてなんだろう。


もう親なんかどうでもよかったはずなのに。
いっそのこと縁を切ろうとまで思っていたのに。


「……どうして、なんですかね」


わたしの手から携帯が滑り落ちて、床に落ちる寸前で拓海くんに拾われる。


「よく、分からないんです。自分でも。もうどうでもいいって思ってたのに、メールを見てからおかしくなって、それで」
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