濁った僕を抱きしめて
「分かった。取り敢えず俺がそっち行くよ」
「え、でも」
「大丈夫だから。ちょっと時間かかっちゃうけど、いい?」


断る理由はない。
お礼を言って電話を切ろうとした、その瞬間。


後ろから何者かに口元を押さえられ、変な感覚に襲われる。
眠気が襲ってくるような、そんな感覚。


それに耐えきれず、わたしは意識を手放した。


意識を失う寸前で、見知らぬ男がわたしの携帯に向けて何かを話していた。


携帯は拓海くんと電話がつながったままだ。
拓海くんがわたしを呼ぶ声が遠くで聞こえる。


重い瞼を、わたしは下ろした。


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