濁った僕を抱きしめて
次に意識を戻したとき、わたしは知らない場所にいた。
手と足は縛られ、口はガムテープで塞がれている。
よくドラマとかで見る光景だ。
まさかそれに自分が巻き込まれるとは。
「起きたか?」
長い髪で片眼を覆い隠した男が話しかけてきた。
わたしに近寄ってくるもんだから、思わず後ずさる。
「ビビんなよ、別に変なことするわけじゃねぇし」
長くて細い指が頬に触れ、貼られたガムテープをゆっくりと剥がした。
その手つきは意外にも優しくて、もしかしたらいい人なのかと思う。
いやでも、こんなことをしている時点で優しくはないか。
「ここ、どこなんですか」
「へー、大して怖くない感じ?流石、黒瀬拓海といるだけあるわ」
「なんで拓海くんの名前を」
そう言った途端、彼の瞳の色が変わる。
「マジであいつと一緒にいんの?自分の身を守りたいならやめとけよ」
「どういうことですか」