濁った僕を抱きしめて
彼の瞳を覆っていた前髪がはらりと落ちる。


瞳は、あるべき輝きを失っていた。


「同級生、なんて皮を被った殺し屋。あいつは俺の大事な人を殺したんだよ」


もう目の前の彼は人間ではなかった。
大切な人を失い、復讐を果たそうと生きている。


ーーケダモノ、だ。


ケダモノにまで落ちてしまった彼のことは誰も止められない。
強いて言うならばその亡くなった彼女さんなんだろうけど、死んだ人は生き返ることは出来ない。


彼は本気で拓海くんを殺す気だ。


それも拓海くんが一番傷つくやり方で。
明確な殺意がなきゃこんなことはしない。


「だから、わたしを攫ったんですか」
「あぁ、そうだよ。ただ殺すだけなんてつまらない。俺と同じ苦しみを与えてから殺すんだ」


床にぽつりと置かれていた鞄を取り、その中から銃やナイフを取り出す。


「どれがいいと思う?」
「……どれで殺すか、ってことですか」
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