濁った僕を抱きしめて


3



璃恋が出て行って数十分が経った。
母親と会わせるのは少し心配だ。
それでもせっかく璃恋が勇気を出したんだ。


そう思うのにどうにも心配で仕方がない。
これじゃあまた璃恋に笑われる。


ズボンの後ろポケットに突っ込んでいた携帯が震える。


画面を見ると璃恋からの着信だった。
終わったら連絡をくれるとは言っていたけど、流石に早すぎやしないか。


「もしもし。どうした、もう終わった?」
「違うんです、予約したって言ってたのに、予約はないって。萩乃って言う名字のお客さんもいないって」
「ちょっと待って、どういうこと?」


電話の先の璃恋はひどくおびえていた。
一度は信頼した母親なだけに、裏切られるようなことをされたのが辛かったのだろう。


「分かった。取り敢えず俺がそっち行くよ」
「え、でも」
「大丈夫だから。ちょっと時間かかっちゃうけど、いい?」


璃恋に戻ってきて貰う方がよかったのだろうか。
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