濁った僕を抱きしめて
俺は引き金を引いた。


ドアの向こうからも銃身が出てきて、引き金には指がかかっている。
その指はぎりぎり引き金を引いて、弾丸は俺の頬を掠めた。


それきり指は動かなくなって、ばたんと身体の倒れる音がする。


小さい血溜まりができ、男の口からも血があふれ出している。


「……拓海、くん」
「まだ終わってないから」


男はまだ生きている。
ひゅーひゅーと息をする音がする。
先程引き金にかかっていた指はネックレスのペンダントトップを握っていた。


数発ほど打ち込めば、ネックレスを握っていた手からも力が抜けた。


ネックレスチェーンの先には小さな小瓶がつけられていて、その中には何かが入っている。
きっと彼女さんの遺骨か何かだろう。


ふと申し訳なく思ってしまった。


大切な人を奪ってしまったことがどうにも申し訳なかった。
今更謝ることは出来ないけれど、復讐という物を突きつけてしまったのは俺だ。
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