濁った僕を抱きしめて
それは生きる理由になり得ても、人間の理性を捨ててしまうような行動にもなり得る。


それを俺が突きつけてしまったのだと思うと、自分の手が憎らしくて堪らなかった。


俺も同じ状況に陥ったらどうなるのだろうか。
璃恋という大切な存在を失ったとき、俺は俺でいられるのだろうか。


醜い獣にでも落ちるんじゃないか。


そう考えて、手が震えていることに気がついた。
どうやら怖いらしい。


怖いとか言う感情はあまり抱いてこなかったのに、初めて知った感情は気色が悪くて仕方がない。


何かにまとわりつかれているような、気持ち悪い感触が俺を襲う。


どんどん人間らしい人間になっている感覚がする。
みんなが当たり前に感じている喜びだとか怒りとか、恐怖とかが俺には眩しすぎる。


どれも似合わない。
不快でしかない。


俺は、こんな世界で生きてていいのかー


「拓海くん」


また俺の世界に入り込んでしまったみたいだ。
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