濁った僕を抱きしめて
軽く言う母親に呆れる。
口では分かったと言いつつ、頭では理解していない。


きっと数ヶ月後、また電話でもかかってくることだろう。


「黒瀬拓海、だけど。それがどうしたの?」
「漢字は?漢字」


母親がこんなにも必死になることは珍しい。
男でも絡んでいるのだろうか。


漢字を教えると母親は何かに驚いて声を上げる。


何がしたいのかよく分からない。
何も言ってこないから切ってしまおうか。


「お母さん、何もないならもう切るよ?内容がないなら連絡してこないでよ」
「……璃恋」


絞り出したような声が携帯から聞こえる。
話したかったことを思い出したのだろうか。


「何?悪いけど、今買い物中なの」
「ニュース、見た?」


よく分からないことを言っている。
突然電話をかけてきた上、拓海くんの名前を聞いて、最後はニュースを見たかなんて。


話の展開が変わりすぎている。


「ニュース?見てないけど。なんで急に」
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