濁った僕を抱きしめて
「詰めるの得意って何?」
「引越しとか経験してるんで、もう慣れたもんなんですよ」


じゃあ、と拓海くんにいくつか手渡された。
コップに入った歯磨きセット。
毎朝使うヘアバンドにドライヤー。


歯磨きセットはジップロックにしまって、他は適当に入れてしまえばいいだろう。


服や様々な物を詰めていく。
出しては入れ、出しては入れてを繰り返す。


そうするとパズルのピールみたいにかちっとはまる時が来る。


拓海くんもボストンバッグに物を詰め始めた。
勝手にスーツケースに詰めてしまったけど良かったのだろうか。


「よし、準備終ーわり。なんか手伝おうか?」
「いや、わたしももう終わったので大丈夫です。もう出発します?」
「そうしよっか」


拓海くんがボストンバッグとスーツケースを車に積んでくれた。


アパートの駐車場に停まったまま動かずにいた車がやっと仕事を果たす時が来る。
< 147 / 241 >

この作品をシェア

pagetop