濁った僕を抱きしめて
ただそれを口に出来なかっただけだ。


「お前は弱いんだよ。いざって時に言いたいことを言えない。逆にそれが強いときもあるのかもだけどな」


誰かにいつか言われた言葉を思い出した。


俺は弱い。
それを自覚していたけど、ずっと見て見ぬふりをしていた。


弱いことは悪いことだと思っていた。
でも璃恋と出会って弱いのも悪くないかと思った。


璃恋は強い。
芯があって、どこまでも続く地平線のような優しさを持っている。


そんな風に強い璃恋と、弱い俺が混ざり合ったら、何でも出来る気がする。


凸凹のパズルがはまるように、ひとつの大きなものになれる気がする。


「拓海くん、五百メートル先サービスエリアって書いてありましたよ」
「了解。一回休憩しよっか」


ハンドルを左に回し、サービスエリアへと続く道に入る。
建物に近い場所に車を停め、シートベルトを外す。


「何食べたいですか?買ってきますよ」
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