濁った僕を抱きしめて
「なんで、なんで……!」


拓海くんの方を見た。


ああほら、やっぱり拓海くんだ。
いつもと変わらない。


はっと息をのんだ。


拓海くんの顔がドロドロと溶けて、溶けた顔が地面に落ちていく。


拓海くんではなくなってしまったものに背を向けて走り出す。
なんなんだあれは。
というかここは何なんだ。夢?それとも現実?


ちらっと後ろを見た。
拓海くんはまだ遠くにいて、わたしのことを追ってくる気配はない。


よかった。そう思って足を止めた。


その時、後ろから誰かに肩を叩かれた。
ゆっくりと振り向くと、そこにはー


ーー顔をぐちゃぐちゃにした、拓海くんがいた。


思いっきり叫んで身を捩る。
拓海くんの力は強くて、肩と手が接着されているんじゃないかと思うほどに離れない。


拓海くんは拓海くんではなくなって、よく分からないものになっていく。


次第にそのぐちゃぐちゃとした物体にわたしは飲み込まれる。
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