濁った僕を抱きしめて
その大きな窓から見える景色が好きで、それが移り変わる度ふたりで窓に引っ付いて眺めた。


ここにも大きな窓はある。


でも家の少し先には大きなビルが建っていて、そのビルが影となって景色を見えなくする。


前の家の近くにもビルみたいな高い建物がなかったわけじゃないけど、上手く交差して窓から見える景色は開けていた。


雪が降ったとか、遠くで雷が落ちたとか、どんな小さいことでも見えたあの窓。


今は、その景観は失われてしまっている。


「……拓海くん」


璃恋が寝ぼけまなこを擦りながら降りてきた。
寒いからと最近買ったもこもこのパジャマはお気に入りらしくて、洗って乾いたらすぐに着ている。


「ごめん、起こしちゃった?そうだ、ココアでも入れようか」


ココアというワードに反応して瞼が少し上がった。
寝起きで声が出ないのか口をぱくぱくしている。


「……朝ごはん、食べましたか」
「ん?まだ。だから一緒に食べよ」
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