濁った僕を抱きしめて
何とか家の前まで来た。
パトカーは来ておらず、後ろを振り返ったら違う方向を進んでいた。


ひとまず安心し、鞄から鍵を取り出す。
この前はすぐに出てこなかったのに、今日はどこにあるかすぐに分かった。


鍵を差して捻る。
いつもなら出る「ただいま」の一言が出ない。
呼吸が苦しい。
来ていなかった疲労がどんと来たか。


「おかえり……って、どうしたの」


肘と膝から血を流して、肩で息をするわたしに拓海くんが駆け寄ってくる。


わたしはジェスチャーで言いたいことを伝えようとするけど上手く伝わらない。


「ゆっくり息して。ほらすー、はー」


わたしの心配なんかしないで欲しい。
何とか息を整えて話そうとすると、今度は咳が止まらなくなる。


「大丈夫、えっと、まず消毒?」


リビングに戻ろうとする拓海くんの腕を掴んだ。
上手く力加減が出来なくて、拓海くんは痛そうに顔を歪ませる。
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