濁った僕を抱きしめて
「拓海くん、はやく、逃げないと、来てる、警察」


点と点のように単語を並べた。
拓海くんはそれを繋いで意味を受け取ったのか、みるみる顔が青ざめていく。


「嘘、なんで」
「警察が、この辺りで目撃情報が出たって。結構捜索してるみたいなので、早く逃げないと」


わたしの息も整ってきて、数分間座り込んでいた玄関からリビングに入った。


拓海くんはもうスーツケースとボストンバッグを出していて、荷物をまとめ始めている。


「目撃情報ってどういうこと?俺外出てないよ?」


二階にある救急箱を取りに行こうと階段を上っていると下から聞かれた。
救急箱とある程度の荷物を持って下に降りる。


「分かんないんですわたしも。外出てないから大丈夫だと思ってたのに、実は見られてたんですかね」


ガーゼに消毒液を浸しながら言う。
準備をした方が良いんだろうけど、砂が入り込んでいたから消毒を優先した。
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