濁った僕を抱きしめて



5



苦しい。息が苦しい。


それでも足を動かさなきゃいけない。


もう拓海くんの笑顔を見れることはないだろう。
拓海くんは生きているのだろうか。


生きていたとしても警察に捕まって終わりだ。
もう拓海くんとは会えない。


わたしはどうしようか。
警察官に向けて何発も撃ってしまった以上、親や友達に向ける顔はない。


だとしたら、もうー


視界の先に、茶色くて錆び付いたアパートが目に入った。
一緒に半年間、それ以上過ごしたアパートだ。


わたしは微笑んで、より足に力を入れた。


こんな薄汚い道で死んで堪るか。
どうせ死ぬなら、自分の好きな場所で死にたい。


後ろからわたしを追いかけてくる声が聞こえる。
嫌だ嫌だ。
あんな奴に殺されたくない。


そんな思いがよりわたしの動きを速くさせた。


少しずつアパートが近づいてくる。
何とかアパートについて、階段を駆け上る。
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