濁った僕を抱きしめて
自分のことを顧みない優しさはどこまでも続く海のようで、垣間見える芯の強さはうねる波のようだと思った。


そんな拓海くんをわたしは愛して、そんな拓海くんに愛された。


汚い水みたいに濁りきって、どれだけ頑張っても綺麗にはなれないわたしを、拓海くんは愛してくれた。


「俺は汚いよ」


何回も何回も拓海くんはそう言っていたけど、わたしにとって拓海くんはこの世で何よりも綺麗なものだった。


大好きだった。ずっと一緒にいたかった。


だから、


「今行きますよ。拓海くん」


銃の先を頭に当てて、わたしは引き金に指を置いた。



< 237 / 241 >

この作品をシェア

pagetop