濁った僕を抱きしめて





夜ご飯は璃恋が作ってくれた。
ふたり分の食事をいとも簡単に拵える、璃恋の慣れた手つきがやるせなかった。


料理は基本親がするものだと思う。
少なくとも俺はそうだった。


ましてや璃恋が通っている高校はかなりの名門校であり、それなりに裕福なはずだった。


でも璃恋は家を出た。
親も友達もすべて置き去りにして、死ぬ覚悟で。


ーー救ってやりたい。


そういった思いが浮かんでは消えていく。
俺は人殺しだ。
身元がバレれば百パーセント逮捕される。


璃恋はそんなことないと言うだろうけど、傍から見ればこの状況は誘拐だ。


互いに助け合っているつもりでも、璃恋が未成年だとなると悪いのは俺になる。


ソファで眠る璃恋の髪をさらりと撫で、俺は家をあとにした。


夜の空の色は濃い。
黒色の絵の具で真っ黒に塗り潰されたようだ。


今日の「仕事」はとある男の始末。
「形が分からなくなるまでやっていい」と言われたから好き勝手やらせてもらおう。
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