濁った僕を抱きしめて
窓から差し込む光で目が覚めた。
握っていたはずの温もりは消えていた。
寝ぼけ眼を擦りながら辺りを見回す。
璃恋はキッチンに立ち、鍋に入ったカレーをかき混ぜていた。
「あ、ごめんなさい。起こしちゃいました?」
「だいじょーぶ」
「もう朝ごはんにしますけど、いいですか?」
「いいよ。顔だけ洗ってきてもいい?」
「ごゆっくりどうぞ」
リビングを離れ、トイレに向かう。
用を足したあとは洗面所に向かい、手と顔を洗った。
鏡に映った痩せ型の男と目が合う。
水が髪の毛先について、雫となって落ちていく。
目が合った男は、どうにも頼りなさそうだった。
再びリビングに戻る。
ほかほかと湯気を立てたカレーとパン、サラダが机に並んでいた。
「もう一品作ればよかったんですけど、寝坊しちゃって」
寝坊したことなかったのに、と口を尖らせて言う。
見知らぬ人の家で眠るなんて通常無理だ。
怖くなって怯えて、一睡もすることが出来ないだろう。