濁った僕を抱きしめて
ふたりで並んでソファに座って、コントローラーを握りしめた。


うるさいくらいに騒いで、笑って。


ーーああわたし、幸せだなあ。


そう思う度、心のどこかに不安が蓄積されていく。


もし、拓海くんがいなくなったら?
もし、拓海くんに捨てられたら?


その事を考えると寒気がする。


考えたくない。
現実になんかしたくない。
現実になんかさせない。


嘘なんていっぱいつく。
わたしのことも犠牲にしていい。


だからどうか、わたしを捨てないで。


「……拓海くん」


隣で大きな液晶画面を見つめていた拓海くんが、ゆっくりと首を傾けてわたしを見る。


「どうした?」


ーーああ、好きだ。


どうしようもなくそう思った。
わたしは拓海くんを好きになってしまって、それはもうどうにも隠せそうにない。


自覚しなければ楽なのに、目の前の彼がそれに気づかせる。


優しくて、温かくて、たまにひどくて。
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