濁った僕を抱きしめて
わたしは雷の音が怖い。


昔お父さんに無理やり抱かれたことがある。
その日は何度も雷が落ちる日だった。


それ以来、雷の音を聞くとあの時のことを思い出してしまう。


迫ってくる唇。
いやらしい手つきで体をまさぐってくる手。
汚い言葉ばかり吐き出す口。


それと交わってしまったわたしがより汚いような気がして、雷が落ちる日は毎回死にたくなった。


拓海くんと出会って少しは変われたかと思っていた。


でも実際そんなことは無かった。


わたしが汚いことに変わりは無い。
体の奥底にそれをしまっておいたとしても、いつか開けなきゃいけない日がくる。


きっといつか、拓海くんに言わなきゃいけない日が来るー


気づけば頬を涙が伝っていた。
拓海くんの方をちらっと見る。


拓海くんは微動だにせず、小さな寝息が聞こえてきた。


今度は手で口を押さえ、声を押し殺して泣いた。


いつかこの過去を打ち明けた時、拓海くんはどんな反応をするだろうか。
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