濁った僕を抱きしめて
だから恋はしないと決めた。


ーーはずだったのに。


どうして好きになってしまったのだろう。
後悔ばかりがわたしを襲う。


拓海くんの手が頬に触れた。
あふれる涙を丁寧に掬っていく。


「嫌なことでもあった?俺で良かったら聞くよ」


拓海くんに支えられながら重たい身体を起こす。
ベッドサイドに置いてある小さいライトをつける。


何を言うべきか、迷う。


頭の中で言葉は大量に浮かんでいるのに、それが全くもって繋がらない。
口から出せそうなのは穢れた過去だけだ。


ならいっその事、それを口に出してしまおうか。


「……わたし、雷が苦手なんです」


拓海くんの手とわたしの手が重なる。
もう何度も知った、この温もり。


「数年前、父に無理やり抱かれたんです。雷の夜に。それ以来、どうも雷がダメで」


拓海くんの手に力が入る。
わたしは笑みを浮かべて、拓海くんを見つめた。
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