濁った僕を抱きしめて
喉の奥まで言葉が来ている。


いつもならそれを飲み込んで、繕った笑顔を浮かべる。
今日も、そうするはずだった。



「……甘えても、いいんですか」


右手が微かに震える。
後ろの窓から雷が落ちる音が聞こえる。


今震えているのはどうしてだろう。


雷が怖いから?
それとも嫌われることが怖いから?


「……いいよ、甘えても」


きっと、どっちも怖いんだろう。


それでも、拓海くんの一言で、片方に対する恐怖は少し軽減されたような気がした。


拓海くんが布団をめくる。
わたしは体を動かし、スペースを空ける。


ふたりで寝るには少し狭い。
くっついていないと眠れない。


目の前には拓海くんの顔がある。
まじまじと見つめられるのは恥ずかしくて、顔を背けた。


「……こっち向いて」


耳元でそう囁かれる。
低くて甘い声で頭がいっぱいになる。


背中に腕が回される。
ぎゅっと身体ごと引き寄せられた。
< 40 / 241 >

この作品をシェア

pagetop