濁った僕を抱きしめて
手を動かして胸板に触れる。
ん、と拓海くんの声が漏れる。


ぶわっと身体の熱が上がっていくのを感じた。


「……ねぇ」
「なんですか?」




「……キス、していい?」



拓海くんの指が頬に触れた。
とくん、とくんと心臓の音が聞こえる。


「返事がないってのは、いいってことでしょ」


唇が、重なった。


雷の音も、雨の音も。


何も、聞こえなかった。
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