濁った僕を抱きしめて
3



雨がバタバタと屋根を打ち付ける夜。


雷に怯える璃恋に、俺は……


「あーもう!」


わしゃわしゃと頭を搔く。
深すぎる空に、俺の声が飛んでいく。


あの夜から数日が経った。
俺たちは何も変わっていない。


表面上、は。


俺は正直、璃恋のことが気になっている。
璃恋は前と全く変わっていない。


浮かれているのは俺だけなのか。


あの日のことを思い出しては、自分にイライラしたり、時々ニヤついたり、そういう自分が嫌になる。


キスをしたのは自分だと言うのに。


「すみません」


女の人が声をかけてきた。
依頼主から送られてきた画像と一致している。


今日はこの人を殺すのか。


甘い声を出して彼女を誘う。
手を取り、恋人繋ぎをする。


彼女は少し驚いたあと、照れたような表情で俺の手を握った。


俺はこんなクソみたいな仕事しか知らない。


だからこそ璃恋との生活との落差が激しかった。


昼は璃恋と幸せに過ごし、夜は銃とナイフを握る。
その激しすぎる差に戸惑う。


目の前の彼女の腕をぐいっと引き、服のポケットに突っ込んでいた手を出す。
その手にはナイフが握られている。


なるべく痛い思いはさせたくない。
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