濁った僕を抱きしめて
ーしごとー
第3節
ーしごとー
1
拓海くんとふたり並んで、テレビを見ながら夜ご飯を食べていた時。
ーープルル、プルル。
「電話?俺かな」
「いや、わたしですね。誰でしょう」
携帯を取って、画面を見た瞬間に、息が止まるような感覚がした。
「誰?かけてきたの」
電話をかけてきたのは、
「……母、です」
数ヶ月音沙汰がなかった、母だった。
今更か、と思った。
家出をした当日に大量の電話とメールは来たけれど、それきり諦めたように連絡はなかった。
なのに、どうして今?
「……どうする?それ」
「出てみますか?」
面白いことを思いついた子供のような表情で言う。
今までなら当たり前のように電話に出なかっただろう。
でも今なら、拓海くんが隣にいてくれるなら。
「……もしもし、お母さん?」
『あんたどこにいんのよ!!』
挨拶もなしに怒号が飛んでくる。
耳元で聞くにはうるさすぎて、しかめっ面を浮かべた。