濁った僕を抱きしめて
「璃恋、俺からもなんか話そうか?」


少し迷ったけれど、ひとりではないということだけ伝えておいてもいいのかもしれない。


「お願いします、何でも言っちゃってください」


拓海くんが携帯に身を乗り出す。


「すみません、電話替わりました」
『何、男?』


「えっと、黒瀬拓海といいます。璃恋さんとお付き合いをしている者です」
『なになに、そういうこと?あんた、彼氏出来たなら言いなさいよ』


急に母親の声のトーンが変わった。
男の前だと話し方も声色も、態度もすべて変わるもんだから嫌でしかない。


『もしかして、同棲したいってこと?』
「えっと……まぁ、そういう感じですね。すいません、言うのが遅くなって」
『いいわよ、お幸せにね』


そう言い残すと母親は電話を切った。
一気に体から力が抜ける。


「……嵐が過ぎたみたいな感じですね」
「ほんと、疲れたわ。毎日あんなの相手にしてたわけ?」
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