濁った僕を抱きしめて
「制服でこんなとこいるって、どういう状況?あ、分かった。家出?」


そう言って悪戯っ子みたいに笑った。
わたしは何も言えず、ただ目の前の綺麗な顔を見つめている。


「……なんか言ってよ。口ついてるんでしょ?」


彼の指がわたしの首筋を通り、唇に触れる。
見た目とは裏腹にごつごつとした指は男らしくて、思わずごくりと唾を飲んだ。


「……家出、しました」


あぁ、なんで言ってしまったんだろう。
後悔してももう遅くて、目の前の彼はふっと口許を緩めた。


「へー、住むとこあんの?」


大して気にしていないような、そんな口調。
なんだか少し腹が立つ。


「……ない、ですけど」


きっと真下から彼を睨み上げた。
彼は驚く様子も怯む様子も見せず、不穏に口角を上げ続けている。


「じゃあさ」


発せられる言葉は、予想外すぎるものだった。


「俺んとこ来る?」
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