濁った僕を抱きしめて
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「……嫌じゃない、って言ったら、どうしますか」
思いがけない言葉に、思わずプルタブにかけた指が止まった。
「何、お世辞?笑わせようとしてくれてんの」
「本気ですよ」
俺を真正面から見つめる璃恋の瞳は、いつになく真剣だった。
俺の口がぱくぱくと動く。
何を言おうか、迷っている。
璃恋が何を言おうとしているのかは、手に取るように分かる。
分かる。分かるからこそ、どうしたらいいのか分からない。
「……拓海くん」
璃恋の声を追いかけるように機械音が部屋に響いた。
璃恋は何かを諦めたように下を向き、唇を噛んでから顔を上げた。
「わたし、お風呂入ってきます。ごちそうさまでした」
ドアが開く音がして、璃恋が部屋から消える。
内心安堵した。
璃恋が言おうとしていたことは、俺たちの関係を変えてしまう大きなものだ。
璃恋の気持ちは分かる。
きっと俺と一緒だ。