濁った僕を抱きしめて
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「昨日の夜、何してたんですか?」
やっぱり、か。
薄々気づいていた。
昨日の夜、携帯を落としたのは璃恋なのではないか。
そして、俺が仕事をしているところも見られたのではないかと。
「……なんで?」
こんなことを言ってもどうにもならない。
ただすべてを言うまでの時間を引き延ばしているだけだ。
「見たんです、わたし。拓海くんが、人を……」
璃恋が口ごもる。
さぁ、俺はどこから話そうか。
昨日の夜のことから?
それとも、俺の人生の最初から?
「そうだよ。俺、人殺しなんだ」
持っていた箸を揃えて置いた。
コップの中に入った、茶色の苦い液体を飲み干す。
苦みが喉に引っかかる。
「なんで、人を殺すんですか。それに、仕事って」
「人を殺すのが仕事だよ。俺の」
自慢げに言った。
俺はこれしか能がない。
俺からこの仕事を奪ったら、きっと何も残らない。