濁った僕を抱きしめて
ーかこー
第4節
ーかこー
生まれたとき、俺の周りにろくな大人は誰一人いなかった。
母親は俺を産んですぐに死んだ。
父親はギャンブルに金をつぎ込んでは、失敗して借金を繰り返していた。
そんな親だったから、こんな人間になってしまったのだろう。
中学生までは父親とふたりで暮らした。
父親は金を稼ぐどころか無駄使いばかりしていたから、高校生だと年齢を偽ってバイトをした。
年齢がバレそうになったらすぐに辞めた。
元々掛け持ちをしていたからひとつくらい仕事がなくなっても大したことは無かった。
高校には行かなかった。
というより行けない、という方が正しいのか。
持ち合わせていたものは大してなかったけれど、唯一持っていたものはこの顔面だった。
持っているものは使うしかない。
昼はバイト、夜は水商売。
女の嬌声ばかりが飛び交う場所から家に帰り、気を失ったように眠る。
苦痛だとは思わなかった。