濁った僕を抱きしめて
例え嘘であろうと、欲のためであろうと、何でもいいから誰かに必要とされたかった。
そうした日々をどれだけ続けただろう。
ある時、一人の客があるものを残していった。
服の間から滑るように落ちてきた、黒くてつやつやとした物体。
どれだけ世間と切り離されていた俺でも、それが何の道具なのかは分かっていた。
そして、それは簡単に人を殺せると言うことを。
俺はその道具をお守りのように、ずっと大事に持っていた。
服のポケットに入れて、たまにその感触を確かめる。
今思えばポケットに入れておくなんて考えられないけど、ホルスターを買っている余裕すらなかった。
またポケットに腕を突っ込む。
銃のひやりとした感覚が心地よかった。