濁った僕を抱きしめて



初めて人を殺したのはいつの時だっただろう。
確か……二十歳を過ぎた頃だった気がする。


「あいつ、死なねぇかな」


水商売の店で、仲が良かった奴が放った言葉だった。
上手く周りと馴染めない俺に話しかけてきてくれたいい奴で、だからこそそんな物騒な言葉が出てくるなんて驚きだった。


「あいつって、誰のこと?」
「俺のこと毎回指名してくるやつ。まじで気持ち悪い」


そいつは俺の隣で文句を垂れている。


ーー役に立ちたい。


そう思うと同時に、ポケットに手を入れた。
いや、だめだ。人を殺すなんて、犯罪だ。


でも、困ってる人がいる。誰かがいなくなることで、安心したり、嬉しく思う人がいる。
その人が、俺の隣にいる。


「ほんっと、誰か殺してくんねえかな。金ならいくらでも出すのに」


銃を握る手が汗でべたつく。


「その人、どんな人?見た目とか、名前とか」
「え?えっと、必ず毎週末に……」


名前と見た目、ある程度の情報を入手してその時は解散となった。
< 65 / 241 >

この作品をシェア

pagetop