濁った僕を抱きしめて
初めて人を殺したのはいつの時だっただろう。
確か……二十歳を過ぎた頃だった気がする。
「あいつ、死なねぇかな」
水商売の店で、仲が良かった奴が放った言葉だった。
上手く周りと馴染めない俺に話しかけてきてくれたいい奴で、だからこそそんな物騒な言葉が出てくるなんて驚きだった。
「あいつって、誰のこと?」
「俺のこと毎回指名してくるやつ。まじで気持ち悪い」
そいつは俺の隣で文句を垂れている。
ーー役に立ちたい。
そう思うと同時に、ポケットに手を入れた。
いや、だめだ。人を殺すなんて、犯罪だ。
でも、困ってる人がいる。誰かがいなくなることで、安心したり、嬉しく思う人がいる。
その人が、俺の隣にいる。
「ほんっと、誰か殺してくんねえかな。金ならいくらでも出すのに」
銃を握る手が汗でべたつく。
「その人、どんな人?見た目とか、名前とか」
「え?えっと、必ず毎週末に……」
名前と見た目、ある程度の情報を入手してその時は解散となった。