濁った僕を抱きしめて
心の奥底に生まれた、冷たい感情に身体が脅かされる。
じわじわと、その感情に身体が侵食されるような気がする。


いくら人生を棒に振ったといえど、人を殺すなんてやってはいけない。
でも、でも。


よく分からない言い訳ばかりが身体の内側に積もっていく。
手が震える。力が入らなくなって、上手く物を握れない。


ーーもう、いいか。


踏み外しに踏み外した道だ。もう、自分で終わりにしてしまおうか。
他人に終わりにさせるより、自分の手で終わりにしてしまった方がいいのだろうか。


星がいくつも浮かぶ夜空を見ながら、俺は途方に暮れている。



「あ、来た。あいつだよあいつ」


視線の先に、この間写真で見た女がいた。
女はただ椅子に座っている。声をかけるなら今しかない。


「あの、すみません」
「はい」


「少しお話があって。お時間宜しいでしょうか」


その一言を口にした時から、俺の人生の歯車は狂いだした。
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