濁った僕を抱きしめて
人生なんて、もうどうにもならないと思っていた。


俺は生まれたときから明るい道なんて歩いていなかった。
明るい道を歩きたいとも思わなかった。


俺はこれでいい。これしかない。


そう、思っていたのに。


「出会っちゃったんだよな、璃恋と」


涙に濡れた顔に触れる。
ごめん、璃恋。
こんな汚い指で触れてしまって。


それでも、触れられずにはいられなかった。


好きにならずに、いられなかった。


今からでも、遅くないのだろうか。
まだ俺は、やり直せるのだろうか。


璃恋の温かい手が俺の体を包む。
抱きしめられているのか、俺は。


「……ねぇ、璃恋」
「なんですか、拓海くん」


「好きだよ」


ああ、やっと、言えた。


ごめんな、璃恋。最低だろ。
こんな瞬間に言うべきじゃない。
分かっていたけれど、コップの縁に張り詰めていた水があふれるように、もう止まらなかった。
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